どんなご縁か、ひょんなことからエチオピアから空輸で生豆のサンプルを直接送ってもらうことになった。
私はさとなおラボという私塾の生徒で、定期的に仲間たちと集まりランニングをしたりご飯を食べたりしている。
その日はラン仲間が勤め先で異動となり、ランニングの後に壮行会を開いた。その際に集まったメンバーの1人と、趣味でコーヒーを自宅焙煎している話から、実は姉妹がエチオピアの生産者と知り合いで販路拡大にお手伝いをしているそう。その流れからとんとん拍子で話が進み、ついに我が家に4エチオピアはウルガ地区の4種の生豆が届くことになった。

目次

長い旅をしてきた豆と植物検疫

話が進んでから約2週間くらい。その包装は長旅をしてきたという雰囲気がシワやカスレからよく現れていた。

コーヒーの生豆も植物扱いとなり、植物検疫を受ける必要がある。
手順としては[入国審査 → 輸入植物検査(植物検疫カウンター) → 税関検査]という流れを踏むらしい。
届いた袋も植物検疫を審査受けた印がテーピングされていた。けれど思ったより手短にクリアできた印象。手数料もかからないらしい。詳しくは植物防疫所で参考にしてほしい。

生産者としてはやはり積極的に買い付けてくれる業者、ショップ、大手商社が取引先であって欲しいのは間違いない。いただいた生豆はプロの目でしっかりと判断するべきと考え、私が勝手に師匠と崇めているTINY PONTA COFFEEさんに検証のお願いをした。
ポンタさんに色々と手取り足取り教えてもらいながら日々飲んでいるコーヒーを購入させてもらっている。惜しみなく生豆の性質や焙煎のノウハウを教えてくれる。この話をお店で相談させてもらった際、面白そうですねと快く引き受けてくださった。器のデカさに感動する。

タイニーポンタさんの協力のもとカッピングへ

届いた袋を開けて中を確かめると、400gほど入ったパッケージが4つ出てきた。手書きの品名が読みづらいが、おそらく全てエチオピアのウルガ地区のものっぽい。これを40gずつに小分けしていく。1種類だけナチュラルとウォッシュドの精製別となっていた。

  • (245)Goro Muda ナチュラル
  • (248)Goro Muda ウォッシュド
  • (241)Muda tatesa ウォッシュド
  • (244)Haro Lebeto ? ナチュラル

サンプル焙煎にはPanasonicのThe Roastを使用。イギリスのIKAWAの機械をベースに作られた家庭用焙煎機でサンプルロースターとしても使用される。 ナチュラルとウォッシュドに分けて、3種類ずつ2回に分けて40gをカップ評価用に焙煎。Scoringは実施しなかったが、一般的な評価シート(COE方式)に基づいて評価しコメントのみおこなった。

PanasonicのThe Roastは約9分ほどで焙煎されるプロファイルで実施。プロファイルってなんぞ?というレベルなのだが、平たくは「データに基づいた火入れに加え管理した温度と時間で設定する焙煎メソッド」という感じだろうか。細かく設定したプロファイルは豆ごとにも存在し、ある一定の品質を出せる黄金比率もあるらしい。
このデータの作り方、豆の見分け方が焙煎士の腕の見せ所なのかもしれない。

アロマの「ドライ」「クラスト」「ブレーク」

いよいよカッピング初体験。今回はタイニーポンタさんのお店で扱っているエチオピアのナチュラルとウォッシュドとも比較して検証した。
焙煎した豆を挽いて、カッピング用のグラスにそれぞれ入れる。まずはその粉にした状態からCOE方式でアロマの「ドライ」をチェック。

私も一緒に体験したが、それぞれの種類で香りが全然違う。特にナチュラルは茶葉やフルーツのような独特な香りが強い。焙煎したてはあまり香らない印象だったけど豆によっても焙煎機によっても様々。これは楽しい。

続いてアロマの「クラスト」。お湯をカップいっぱいまで注ぎ4分間放置する。その後改めて香りをチェック。
お湯を注ぐとまた香りが変化する。さっきまで強い香りを放っていたものが急に弱々しくなったり、地味だった印象の豆が華やかさが出てきたり。

最後はアロマの「ブレーク」。全然知らなかったのだがクラストで状態維持していたものをスプーンで崩し内包された香りを放出する。だからブレークね。なるほど。上澄みの粉や泡を丁寧にかき取る。抽出されたコーヒー液が出てきてようやくテイスティングができる状態になった。これまでの工程でアロマに対する評価が実施できた結果になる。けれど味わいながらも香りの印象は変わるし、時間経過でもそれは大きく変わるそう。また評価軸としてアフターテイスト(味わいがどこまで継続されるか)がとても大切だということも教わった。
確かに美味しいコーヒーは冷めても美味しいし、嫌なえぐみや酸味が出てくるコーヒーは飲みたくない。
コーヒーを味わう時間全体がその品質やポテンシャルの評価につながるということを知った。

テイスティングは奥深い

いよいよテイスティング。片手に空いたカップとスプーンを持って、ひとすくいした液を「ズッ!」という一気に口に吸い込む。その行為が印象的で勝手にプロフェッショナルを感じた。
味わいだけではなく、その舌触り、マウスフィール、アフターテイスト、クリーンさ、印象に合う食材や味覚に例えた評価など。カッピング には方式にも沿った様々な表現方法があるらしい。本当に奥が深い。
4種類の評価結果は以下になった。

(245)Goro Muda ナチュラル

  • アロマ、フレーバーは熟したベリー
  • アフターテイストが短い
  • スイートネスも物足りない

(244)Haro Lebeto ? ナチュラル

  • アロマ、フレーバーでベリー(物足りない)
  • グッドマウスフィール
  • アフターテイストが短い
  • 冷えてきてからの印象×

(248)Goro Muda ウォッシュド

  • クリーンカップ高い
  • シルキーマウスフィール
  • スイートネスもある程度ある

(241)Muda tatesa ウォッシュド

  • フレーバーは後半でフローラル
  • アフターテイスト短い
  • クリーンカップが低く、マウスフィールもざらつきを感じる
  • アシディティの強度は強いが、くもっている
  • 焙煎度合いによってはまた違う印象になる可能性あり

何度も口含み、空のカップに戻してまた他の液を確認する。正直途中からよくわからなくなった。違いの差があやふやになるし舌が狂ってくる。それでも敏感にそれぞれの印象を言語化し、時間経過した状態をまた比べていく。今回は同じ産地のものなので余計分かりづらいかもしれないが、一般的なカッピング は様々な産地のものをもっと数多くを同時に行う。
面白いことに美味しい豆はカッピング の量の減りが著しいらしい。美味しいものはやっぱりみんな飲んでしまうとか。

今回はこのような結果にはなったが、また焙煎方法やプロファイルを変えることで変わってくるかもしれない。
タイニーポンタさんにはできるだけのお礼をして、今回の検証を終えた。
普段は代行焙煎や友人知人と研究としてカッピング も行っているらしい。今回は特別なご好意だったんだなぁと改めて感謝しかない。

私も資格取得も含めこれからも勉強、研究を欠かさず続けていきたい。

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